ご挨拶

Greetings

センター長 加藤 規弘

Director of the center
Norihiro Kato

新たな医療の開発と臨床応用に
取り組んでまいります。

ゲノム医療とは、「ゲノム情報 — 遺伝的な情報全体 — を網羅的に調べて、その結果をもとに、より効率的・効果的に病気の診断・治療などを行う」ことを意味します。1990年から2003年までのヒトゲノム計画を基盤として、ゲノム研究は目覚ましいスピードで進展しています。次世代シークエンサーの開発・改良がその駆動力となっていることは言うまでもありませんが、ゲノム医療としての運用がすでに始まっているのは、難病などの希少遺伝性疾患の遺伝子診断、及びがんの分子標的薬に対するコンパニオン診断薬の開発、などです。ゲノム医療は、臨床的インパクトのみならず、ゲノム研究における学術的・経済的インパクトも大きな分野であり、産出されるビッグデータの処理は新たな産業分野として注目されています。

先進諸国を中心に、社会の高齢化が進むなかで、予防医療の重要性が年々高まりゲノム医療実用化の動きが加速しつつあります。我が国でも、ナショナルセンター、大学、関連学会等で、来るべきゲノム医療の準備に着手し始めていますが、国内外のゲノム研究開発やゲノム医療の進捗状況に鑑みると、多様な課題に対して戦略的、かつスピード感をもって取り組むことが必要と思われます。こうした状況のなか、国立国際医療研究センターのゲノム医療開発・推進組織として、2016年4月1日にメディカル・ゲノムセンター(Medical Genomics Center:MGC)が発足しました。

次世代シークエンサーやバイオインフォマティクス(生命情報学)の進歩に伴い、ゲノム医療の主軸アプローチは、単一遺伝子疾患の遺伝子検査(genetic testing)からゲノム検査(genomic testing)へと移行しつつあります。診療・研究の観点からすると、遺伝子検査が、通常、タンパクコード遺伝子で既知の機能を持つ、特定のDNA断片を調べることを指すのに対し、ゲノム検査は、先行する知識に頼らず、ゲノムを対象にして、注目する疾患に関わるバリエーション(群)を網羅的に探索するものです。当面、次世代シークエンサーで同定された多くの遺伝子変異への対応は臨床研究として実施され、段階的に発展・成熟していく見通しです。そして将来的には、新たな診断・健康指導ツールの一つとして、ゲノム情報が電子カルテ等に導入されると期待されており、その関連分野において、様々な企業が積極的に参入し始めています。

ゲノム情報を医療/ヘルスケアに導入する際には、その機微情報という性質、偶発的所見への対処(遺伝カウンセリングを含む)、莫大かつ高い精度が求められる全ゲノムシークエンスデータの情報処理・品質管理、そして臨床的及び遺伝医学的観点からみた有用性の解釈、分かり易く誤解のない形での患者・被験者への説明方法、など検討すべき課題は多くあります。これらの課題に取り組むべく、国立国際医療研究センターのMGCには、臨床ゲノム解析部門、ゲノム臨床応用部門、ゲノム医療支援部門、NCGMバイオバンクの4つの部門・機能を設置・移管して、新たな医療の開発と臨床応用に取り組んでまいります。

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